2010年6月8日火曜日

入院記録⑦

手術が終わって数日経ったとき、ある事件がおこった。
目の前の腎臓結石で緊急入院したSさんとご家族がベッドで何やら話している。
「あれ?お母さん(Sさん)、この前もらったパジャマは?あれに着替えないと!」
「ロッカーにない?」
「ないよ」
そんな事はないだろうと、ベッドの周りや、病室の入り口にあるロッカーを3人位で探していた。
Sさんの他には、私の大好きだった90歳のおばあさんが退院してしまったあと、同じ病室にやはり90位の年齢のアルツハイマーのおばあさんが入院してきたので、病室は変わらず3人の患者。
Sさん達のパジャマを探しながら話していた声が一瞬にしてなくなった。
そのあと、Sさんがこらえきれない感じで笑いそうになりながら、
「ねえ、聞いてよ」
と私のベッドの所にやってきた。
「あのね、今ね、パジャマ替えようと思ってたら見つからなくてね、今ずっと探してたら、フフフ、隣のおばあちゃんが着てるの!さっきの看護師さん間違えたのねえ。花柄のピンクのパジャマをおばあちゃん着てるのよ。」
1時間前に、その日の担当だった非常にてんぱった男の看護師がバッタンバッタン音たてて何かしてるなと思ったら、そのおばあさんのパジャマを探していたようで、私のロッカーやらSさんのロッカーやらまで探してしまったらしい。私は入院する日に着てきたGパンしか置いてなかったから被害は免れたが、Sさんはパジャマをそこに置いていたので、勘違いされてそれを着せてしまったらしい。
尋常じゃないあせりかただったので、間違えてしまったんだろう。おばあさんは前日に入院してきたから、まだご家族の人が替えのパジャマを持ってきてなかっただけなのに。
Sさんと、あーあの人が間違えたんだねえと言って、その看護師がいかに尋常なあせりかたではなかったという事に話しの花が咲いた。
アルツハイマーのおばあさんは、数時間前の事を覚えていない。ご家族が面会にいらしても、1時間たつと忘れてしまっている。
でも、ご家族が帰る時は悲しそうで、病室のドアを閉めたあと、ずっとその人の名前を叫んでいる。
Sさんは、そういうおばあさんに
「寂しいんだよねー。でもまた来てくれるよ。大丈夫だよー」
ってよく声をかけていた。私はどうやって声をかけてあげたらいいのかわからなかったけど、そっか、こうかけてあげればいいのか。なんてことを日々学んでいた。

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